「待つ」ということ |
BB歴3年ともなれば、B.B.カードのセンテンスは、自力で、意味もほとんどわかって言えています。合体作文も、3~4枚が容易にできるようになり、「BB1コマ劇場」「BB4コマ劇場」という英作文遊びもしています。ストーリーのある英作文をマンガのようにイラストと文字で表すのですが、英文で言い足りない部分は、イラストの中に日本語で書いてもいいことになっています。
あるクラスで、他の子が4枚作文の「BB1コマ劇場」を楽しみ始めた頃のこと。クラスでは口頭で4枚作文もできて言えているのに、家で書いてくるものは、ずーっと主語替え作文という子がいました。そのうち、他の子が4コマの用紙に手を出し始めても、慎重にノートに主語替えを繰り返していました。けして面倒がっているわけではなく、自分自身の意思でそうしているように見えましたので、私も「4枚作文にしてみよう」とか「4コマで描いてきて」などとは言わずに見守っていました。そのうち、3枚合体にしたり、2コマから挑戦してくれるかもしれない・・・なんて思いながら。
ところが、ある日突然、いつの間に用紙を持ち帰ったのか(笑)、かわいい「BB4コマ劇場」を描いてきてくれました。そして、さらに数週後には、なんと紙を2枚つなげた8コマの作品を見せてくれたのです。文はやはり主語替えか、主語が2人になっているくらいでしたが、私はむしろ、そのシンプルな文がどんどんつながっていく8コマのお話をわくわくしながら読み、すっかり感心してしまいました。
でも、不思議だったのは、私の中で特別な衝撃が走ったという訳ではなかったことです。たぶん、その子にとっても、大事件ではなく「なんだかやってみたらできちゃった」という感じの出来事だったのだと思います。きっと、人一倍慎重なその子は自分の中に「自信」が貯まっていくのを待っていただけなのかもしれない、そう感じました。ひたすら主語替えを繰り返して、イメージを絵や動画として頭の中に描いて楽しむ、そこに時間をかける必要があったんだなぁ、と。
B.B.カードの授業にはカリキュラムもテストもありません。カリキュラムの代わりに「一人一人を観察する」という考え方があります。それは、「何ができていないかをチェックする」という意味でも「噛んで砕いて導く」という意味でもなく、その子のやり方で自信を持てるように寄り添うということです。テストをせず「比べない」という考え方があります。それは、けして「比べたらかわいそう」とか「プレッシャーをかけない」とかいう意味ではなく、その子その子の伸びる方向やタイミングを尊重するということです。では、なぜそうすることが必要なのでしょう。
英語の「土台」作りには「繰り返す」ことが絶対に必要です。そして、その「繰り返す」ことを伸び伸びと続けてもらうためには、その子の歩調で応援してあげることが大切です。
え、いつまで待つのか、って?・・・「OK」を出すのは、私ではなく、おそらく子ども達自身だと思います。