BBあるある劇場 (69) 〜 土台のための地盤は? 〜 |
こんにちは、魚住です ^^
この1年ほど、合体作文やインタラクションについて、いろいろなことを書いてきました。
「おしゃべりしよう」の途中ですが、とても大事なことを書きたくなったので、ちょっと寄り道したいと思います。
B.B.メソッドに出会って、かれこれ16年が経ちました。
それまでは、どこかのワークショップに出ても、新しい教材を見つけても、ついつい自分の方に引き寄せて、いいとこ取りをして、自分風にアレンジしてしまいがちでした。そうすべきだと、当たり前のように思っていました。
そんな私が、BBに対しては、珍しく、本当に珍しく、自分から立ち上がってBBの方へ歩いて行きました。
なぜかわかりませんが、BBは他の教材とは違う、そのまままるごとの「メソッド」であるべきだと感じました。
BBの本質を知りたいと思いました。
そして、そうできたことが、今の自分と生徒達を支えていると思うと、あの頃の自分をちょっと褒めてあげたいです。
B.B.カードを16年使ってきて、たくさんのことを学びましたが、いつも還るところがあります。還るたびに、その意味の大きさに懲りずに驚きます。それは・・・
BBっ子達にとって一番大事なことは、
BBセンテンスが英語らしいリズムとイントネーションで言えること。
意味がわかって言えていること。
それが、子ども達の中に英語の土台を作るための大前提、地盤のようなものです。
合体作文も、インタラクションも、文法的な言い換えも、全て「BBセンテンスがわかって言えて」こそ意味があります。
そうでなければ、やらされているだけ。
先生が時間と手間を節約して覚えさせても、よかれと思って教えても、地盤が弱ければ良い土台はできないと思います。
逆に、良い地盤の上に、良い土台ができれば、あとはもう本人がどう勉強するかだけの話です。
何度でも言います。
まずは、何より、英語らしいリズムとイントネーションで言えることです。
ずっと以前のことですが、小5の春に入会した男の子がいました。
少し凸凹があるのかな?とは思いましたが、私の声に合わせてそれらしく文が言えているように聞こえましたし、ゲームは楽しそうでした。
ただ、1年以上経っても、ノーリーダーで自分で言える文は少なく、言えてもふにゃふにゃのまま。
"Mad Monkey made a lot of money." も、いつまでも力無い声で「マールマンキーウェイダァララーブマリー」という感じでしたが、そのうち言えるようになるだろうと、気にせずサポートしていました。
でも、ある時、意味が取れていないということがわかりました。
私が「誰がお金をたくさん稼いだって?」と聞けば、他の子達と一緒に「マーッドマンキー!」と答えてくれていたので、わかっているのだろうと思い込んでいましたが、「機械的に」答えていただけで、「意味」がわかっていたわけではなかったのです。
言い換えも、文字カードを選ぶのも、みんなの真似をしていたのはいいのですが、そもそも言えていないために、そのプロセスで「気づき」はなく、空振りするようで、ひっかからないのです。来年は中1、どうしようかな…と迷いました。
ある日、ふと、彼のふにゃふにゃの「マールマンキーウェイダァララーブマリー」がとても英語らしいことに気づきました。
それが私を、迷いとは逆の方向に向けさせました。
試しに、授業の始めに、各自BBのCDでシャドーイングする時間を作りました。彼は誕生日に買ってもらったというカッコいいヘッドフォンを持って来ました。すると、2週目あたりから、彼の口から次々と英語らしいBBセンテンスが聞こえてきました。
お気に入りのヘッドフォンで、雑音無しに聞こえてきた Mad Monkey made a lot of money. と、それまでに体に染み込んでいたリズム、イントネーションが融合していったのがわかりました。
みんなでするリピート、言い換え、ゲーム・・・。
それまでの彼にとっては、次々に飛び込んでくる刺激や雑音が多すぎて処理し切れなかったのかもしれません。
彼が言えるようになった文から、クラスでもう一度「手箱」で丁寧に意味取りをしました。
2、3ヶ月するとどの文も明瞭になり、小学校を卒業する頃には、言い換えやインタラクションに対する反応が全く違っていました。たくさんの「気づき」が生まれ、あっと言う間に文字カードが読めるようになり、全てが繋がっていったようでした。
でも、もしかしたら、彼自身は自分の変化に気づいていなかったかもしれません。
BBのおかげで、初めから「できた気になって」くれていたので ^^
彼が過ごした「マールマンキーウェイダァララーブマリー」時代の時間は、もっと短くしてあげることはできたかもしれませんが、彼には必要な時間だったような気もしています。正直わかりません。
はっきり言えることは、「マールマンキーウェイダァララーブマリー」が "Mad Monkey made a lot of money." になったその日から、彼には違う世界が見えていただろうと言うことです。
中2からは、部活の関係で時間がレギュラーのクラスに時間が合わなくなり、しばらくプライベートで来ていましたが、BBの他に、短い本を読んだり、グラマーカードで遊んだりして過ごしました。学校の勉強を見てほしいとは言われず、中3で英検3級を取ったところで卒業していきました。
今は大学生?
きっと何とかやっているでしょう。
結局、どの子にもそうしているように、彼にも何も「教え」ませんでした。「練習」でも「宿題」でもなく、無理な矯正でもなく、ただわかって言えるところまで行けたことが、彼の土台のための地盤になった、私はそれをサポートした。それだけです。
どんな工夫が必要か、どれだけ時間をかけるか、それはその子に出会うまではわかりません。
でも、大事なことは、どの子にとっても同じです。
英語らしいリズムとイントネーションで、わかって言える。
そこまで持っていければ、私の仕事は半分以上終わる。
それがわかったのは、彼のおかげかもしれません。
【魚住】